ドローン大辞典
マルチコプター|用語解説|ドローン大辞典
概要
マルチコプターは、複数のローター(プロペラ)を用いて揚力を発生させる回転翼航空機であり、現在のドローンで最も一般的な構造を持つ機体形式です。高度な安定性と操作性を備え、空撮や測量、点検、物流まで幅広い用途で利用されています。運航においては、姿勢制御の仕組み、安全対策、冗長性、行政手続きなど、多岐にわたる要件が関係し、特にレベル3.5やレベル4といった高度な飛行レベルでは厳格な基準が適用されます。
マルチコプターの構造と飛行原理
マルチコプターは、複数のローターが機体の周囲に配置され、これらの回転によって揚力を得て垂直上昇する構造を持ちます。ローターが発生させる反トルクは、偶数のローターを半数ずつ逆方向に回転させることで相殺されます。
姿勢制御(ピッチ・ロール・ヨー)は各プロペラの回転数を変化させて行われ、ESC(エレクトロニックスピードコントローラー)がモーターの回転数を調整することで推力が制御されます。操縦者は送信機の操作を通じて3軸の回転動作および推力を操作し、機体の挙動を制御します。
飛行における能力要件
遠隔操作でマルチコプターを飛行させる場合、GPSによる位置保持機能を使用せずに以下の操作を安定して行える能力が操縦者に求められます。
安定した離陸・着陸
上昇
一定位置と高度を維持するホバリング
ホバリング状態からの機首方向の90°回転
前後移動
左右移動または左右旋回
下降
これらはドローンの基本操縦技能であり、飛行許可・承認の審査において確認される重要な項目です。
安全機能とリスク管理
マルチコプターには、さまざまな不具合モードに備えた安全対策が求められます。
フェールセーフ機能としては、通信断絶時に自動帰還して離陸地点へ戻る機能や、安全に自動着陸する機能が挙げられます。カテゴリーⅢ飛行(有人地帯での目視外飛行)では、第三者への危害を低減するため、プロペラやモーターの冗長性、パラシュートによる衝撃軽減などの装備が検討事項として求められます。
また、フライトデータを記録する機体も多く、事故原因の解析や運航の改善に役立てられています。
運航レベルと規制の枠組み
マルチコプターによるドローン運航は、リスクの程度に応じてレベル化され、適用される規制が段階的に定義されています。
レベル4:有人地帯での目視外飛行。第一種機体認証、一等無人航空機操縦士、飛行ごとの許可・承認が必須。
レベル3.5:無人地帯での目視外飛行。カテゴリーⅡ飛行に該当。補助者配置の代わりに機上カメラによる第三者不在確認が条件。
レベル3以下:目視外飛行(無人地帯)、目視内自律飛行、目視内操縦飛行。機体認証とライセンス取得により飛行ごとの許可が原則不要。
特にレベル3.5では、従来必要だった立入管理措置が不要となるなど、運航者の負担が大幅に軽減されています。
関連する行政手続き
マルチコプターの飛行許可・承認は、国土交通省のドローン情報基盤システム(DIPS2.0)で申請します。申請には機体情報(基準適合性・運用限界など)、操縦者情報(飛行経歴・能力など)、保険加入状況、緊急連絡先、使用マニュアル、飛行概要などの情報が必要です。
特定飛行では飛行経路の特定が必要ですが、包括申請により「全国」「都道府県単位」など広域で申請することも可能です。レベル3.5申請は「運航概要宣言書」を用いて手続きを簡素化する仕組みが導入されています。