ドローン大辞典
フェールセーフ|用語解説|ドローン大辞典
概要
フェールセーフ(Fail Safe)とは、ドローン(無人航空機)のシステムや通信に異常が発生した際に、安全な状態へ移行して事故や被害を防ぐための仕組みを指す 。これは、不具合発生時等において第三者や物件に危害を及ぼさない運航を確保するため、機体に装備が求められる危機回避機能である 。 この機能の信頼性は、リスク評価(SAIL)の結果に応じて求められる運航に関わる安全目標(OSO)、特にOSO#10(技術的な問題からの安全な復旧)やOSO#12(外部システムの劣化を管理)を達成する上で重要な役割を持つ。フェールセーフは、操縦者の操作不能や通信断など、想定外の事態に対しても機体が自律的に安全行動を取るよう設計されている。
目的と位置づけ
フェールセーフの目的は、システム故障や外部要因による制御不能状態でも、第三者や物件に危害を及ぼさない運航を確保することにある 。
航空法上の義務:航空法第132条の85では、操縦者に対して安全確保義務が課せられており、フェールセーフ機能の適切な設定と検証はその実践手段とされる。
リスク評価との関係:フェールセーフ機能は、ドローンの運航リスク評価において、機体の技術的な問題(OSO#10)や外部システムの機能低下(OSO#12)といったハザードが発生した際に、安全に復旧または飛行を継続するための設計要件として重要視される。。
主なフェールセーフ機能
ドローンのメーカーや機種によって実装方法は異なるが、代表的なフェールセーフ動作(危機回避機能)は以下の通り。
自動ホバリング:通信や操縦信号が一時的に途絶した際に、その場で静止して安全を維持する。GNSS等の電波に異常が見られる場合に、その機能が復帰するまで空中で位置を継続的に維持する機能も含まれる。
自動着陸:復旧が見込めない場合やバッテリーが限界に近い場合に、安全な地面を検知して自動着陸する。GNSS異常時に安全な自動着陸を可能とする機能もこれに含まれる。
異常時対応:モーターや電源異常時に姿勢制御を保持し、落下速度を抑える。また、電池の電圧や温度等に異常が発生した場合に、発煙及び発火を防止する機能も求められる。
これらの動作は、異常検知から復帰動作までを一貫して制御し、被害拡大を防ぐ役割を果たす。
リスク評価との関係
リスク評価(SAIL)では、フェールセーフ機能の有無や信頼性が安全性の保証水準(ロバスト性)を左右する。ロバスト性は、安全性の水準(リスク低減効果)と保証の水準(証明方法)の双方を勘案して評価される。
通信断後に自動帰還が確実に作動する設計は、OSO#10(技術的な問題から安全な復旧)に対応し、リスク低減策として評価される。
機体が飛行エンベロープ(速度・高度・飛行範囲)を超過しないための機能、または超過の傾向がある場合にエンベロープ内に回復する機能を備えている場合、これはOSO#18(飛行エンベロープ自動保護)に対応し、安全性の水準として評価される。
フェールセーフが動作しても、第三者の上空を飛行する可能性が残る場合は、運航設計や立入管理措置の見直しが必要となる。たとえば、飛行範囲の外周から製造者等が保証した落下距離の範囲内を立入管理区画として設定するなど、地上リスクを最小化する対策が求められる。
実務上の注意点
操縦者は飛行前に、フェールセーフの動作内容を含め、機体の通信系統、推進系統、電源系統及び自動制御系統が正常に作動するかを確認する必要がある。また、DIPS2.0(ドローン情報基盤システム)で通報した飛行経路や高度設定と、フェールセーフの挙動が整合しているかを検証することが求められる。
帰還高度が周囲の障害物より低い場合や、GPS信号が遮断される環境では、フェールセーフの作動がかえって危険を生む可能性がある。
GNSS受信装置による位置推定機能が使用できない緊急時には、手動操作によるホバリングや安全な着陸が必要となる。
夜間飛行や目視外飛行を実施する際には、フェールセーフ作動後の挙動を事前にシミュレーションし、運航マニュアル内に対応手順を明記しておくことが望ましい。
関連用語: リスク評価(SAIL)/安全目標(OSO)/フェイルオペレーショナル/自動帰還(RTH)/立入管理区画/通信断/特定飛行/DIPS2.0