ドローン大辞典
ARC|用語解説|ドローン大辞典
概要
ARCとは、ドローンの運航において、有人航空機と衝突する可能性の大きさを定性的に分類した空中リスク指標である。主にSORA(Specific Operations Risk Assessment)に基づくリスク評価プロセスの中で用いられ、レベル4飛行などのカテゴリーⅢ飛行における飛行許可・承認の判断材料として重要な位置を占める。
ARCの基本概念
ARCは Air Risk Class の略称であり、ドローンが飛行する空域において、有人航空機と遭遇・衝突する確率がどの程度あるかを段階的に示すものである。これは事故発生確率を数値で示すものではなく、空域の性質や運航環境を踏まえた定性的な分類指標として扱われる。
ARCは、地上リスクを評価する概念とは別に、空中リスクのみを対象としている点が特徴である。
ARCの4段階分類
ARCは、有人航空機との遭遇確率の低い順に、以下の4段階に分類される。
ARC-aは、有人航空機と遭遇する可能性が非常に低い、もしくは事実上存在しない空域である。戦術的対策を追加しなくても、空中リスクが許容されるレベルとされる。ただし、日本の運航環境では、ドクターヘリなどが150m未満を飛行する可能性があるため、屋外でARC-aに該当するケースは限定的である。
ARC-bは、有人航空機と遭遇する可能性は低いものの、無視できない空域を指す。事前の調整や制限といった戦略的対策により、リスクの大部分を管理できるとされる。一般的な地表または水面から150m未満の空域での飛行は、この区分に該当することが多い。
ARC-cは、有人航空機と遭遇する可能性が高い空域である。戦略的対策によって一定のリスク低減は可能であるが、より慎重な運航計画と追加対策が求められる。
ARC-dは、有人航空機と遭遇する可能性が非常に高い空域であり、戦略的対策によるリスク低減が困難とされる。進入管制区、空港等周辺の空域、自衛隊や米軍が管轄する空域などが代表例である。
ARCの判定プロセス
ARCの判定は、SORAにおけるStep #3として整理されており、段階的に行われる。
まず、飛行予定空域の特性に基づき、初期ARCを判定する。空港等周辺の空域かどうか、地表または水面から150m以上か、都市部か非管制空域かといった条件をフローチャートで確認し、初期のARCクラスを決定する。
次に、必要に応じて戦略的対策によるリスク低減を検討する。これは飛行前に講じる対策であり、有人航空機が飛行しない時間帯での運航、管制機関や空港管理者との事前調整、ジオフェンスによる運航範囲の限定などが含まれる。条件次第では、初期ARC-dと判定された空域であっても、ARC-bまで低減できる場合がある。
最後に、戦略的対策を反映した後の残留ARCを決定し、これを最終的な空中リスククラスとして扱う。
ARCと戦術的対策の関係
最終的に決定されたARCに応じて、飛行中に実施すべき戦術的対策のレベルが定まる。
ARC-bでは、目視による監視や補助者の配置など、比較的低いレベルの対策で対応できる場合が多い。ARC-cでは、より高度な監視体制や回避手順が求められる。ARC-dでは、高性能な衝突回避システムの搭載など、非常に高いレベルの戦術的対策が必要とされる。
このように、ARCは単なる分類指標ではなく、運航に必要な安全対策の水準を決定するための基準として機能している。
実務上の位置づけ
ARCは、飛行許可・承認申請書やリスク評価資料の中で、飛行空域の危険度を説明するための中核的な概念である。特にレベル4飛行や第三者上空飛行では、ARCの判定結果と、それに応じた戦略的・戦術的対策の妥当性が審査上重視される。
飛行計画を立案する際は、まず自らの運航空域がどのARCに該当するかを整理し、高リスクな場合には事前調整による低減や追加対策を検討することが、安全確保と許可取得の両面で重要となる。