ドローン大辞典
通信遅延|用語解説|ドローン大辞典
概要
通信遅延とは、操縦者が送信した操縦コマンドが機体の動作として反映されるまでの時間差や、機体から送信された映像・各種データが操縦者側で表示・取得されるまでの遅れを指す。ドローンは低空かつ障害物の多い空域を飛行するため、特に目視外飛行(レベル3・レベル4)においては、衝突回避や精密な制御の成否を左右する重要な要素となる。
許容される通信遅延の考え方
有人地帯での目視外飛行(レベル4)などを想定したリスク評価ガイドラインでは、他の航空機との衝突を回避するための戦術的対策として、通信遅延に関する具体的な性能要件が示されている。
コマンド&コントロール(C2)リンクの遅延
操縦者が回避コマンド(降下や旋回など)を送信してから、ドローンが実際に動作を開始するまでの時間を指す。
映像伝送の遅延
機体搭載カメラの映像が操縦者の画面に表示されるまでの時間であり、周囲状況の把握や回避判断の基礎となる。
衝突回避を目的とする場合、転送遅延は1秒以内であることが求められるケースがある。交通情報の更新遅延
他の航空機の位置情報(緯度・経度・高度など)がシステムに反映されるまでの遅れを指す。
例えば更新頻度が5秒の場合、衝突回避判断を支援するためには、10秒以内の遅延で情報が提供されることが適切と考えられている。
通信遅延が発生する主な要因
通信遅延は、電波の伝搬特性や通信方式の違いによって引き起こされる。
マルチパス(多重波伝搬)
送信された電波が山や建物などに反射・回折し、複数の経路を通って受信される現象である。
これにより信号到達時間にばらつきが生じ、通信品質の低下や一時的な遅延増大、操縦応答の不安定化を招くことがある。通信方式の違い
直接通信(2.4GHz帯など)
操縦装置と機体が直接通信する方式で、比較的低遅延である一方、通信距離や障害物の影響を受けやすい。LTE(携帯電話回線)
広域通信が可能だが、基地局やネットワークを経由するため、回線混雑時には遅延や不安定化が発生することがある。衛星リンク
地上局と衛星を経由するため物理的距離が長く、応答時間が大きくなる傾向がある。設計段階でこの遅延を織り込む必要がある。
現状の課題と関連技術
ドローン航路などの社会実装の現場では、通信遅延に関する課題が顕在化している。
有人航空機位置情報の遅延
ドクターヘリなどの有人ヘリコプターの位置情報を共有する場合、約2分程度の遅延や情報途切れが確認されている。
秒単位の判断が必要となる衝突回避においては重大な課題であり、リアルタイム性の向上が求められている。高精度測位の収束時間(参考)
PPP方式などの高精度測位では、通信遅延とは別に、測位結果が安定するまで数分から30分程度を要する場合がある。
この収束時間を5分以下に短縮する技術の開発も進められている。
要点
通信遅延は、ドローンの安全運航、とりわけ衝突回避に直結する重要な性能指標である。実務上は、コマンド送信から実行まで3~5秒以内、映像確認まで1秒以内といった具体的な許容値が目安とされる。今後は、5Gなどの高速・大容量・低遅延通信技術や、運航管理システムの高度化によって、通信遅延の低減と、より安全な自律飛行の実現が期待されている。