ドローン大辞典
ヘリコプター|用語解説|ドローン大辞典
概要
ヘリコプターとは、回転する主回転翼によって揚力を得る回転翼航空機の一種である。航空法上は「回転翼航空機(ヘリコプター)」として分類され、一般的なドローンに該当する「回転翼航空機(マルチローター)」とは構造や操縦原理が異なる。無人機の分野においても、農業用無人ヘリコプターなどが長年実用化されており、現在も用途に応じてマルチローターと使い分けられている。
構造と飛行原理
ヘリコプターは、単一の大径ローターを中心とした構造を持つ。
揚力の発生
メインローター(主回転翼)を高速回転させることで揚力を得る。ローター径が大きいため、同じ重量を持ち上げる場合でも空力効率が高い点が特徴である。姿勢制御(可変ピッチ機構)
ヘリコプターは、ローターの回転数を一定に保ったまま、ブレード1枚ごとのピッチ角を周期的に変化させる可変ピッチ機構を備えている。スワッシュプレートなどの複雑な機構により、前後・左右への移動や姿勢制御を行う。これは、モーター回転数の増減で制御するマルチローターとは根本的に異なる点である。反トルクの打消し
メインローターの回転により機体には逆向きの回転力(反トルク)が発生する。この反トルクを打ち消すため、尾部にテールローターを備えており、これを制御することで機首の向き(ヨー方向)を変更する。
飛行特性と注意点
ヘリコプターは垂直離着陸やホバリングが可能である一方、特有の飛行特性を持つ。
慣性力の大きさ
特に最大離陸重量25kg以上の大型機では慣性力が大きく、操縦入力に対する反応が遅れる傾向がある。そのため、ホバリングや位置保持では早めの操作が求められる。ボルテックス・リング・ステート
垂直降下や、低速前進を伴う降下を行うと、機体が自らの吹き下ろし気流に巻き込まれ、揚力を急激に失う状態に陥ることがある。これを回避するため、前進しながら降下するなどの運航が重要とされる。地面効果
地面付近では吹き下ろしの影響が強くなり、機体挙動が不安定になりやすい。このため、離陸後は速やかに安全高度まで上昇することが推奨される。オートローテーション
一部の機体では、動力が停止しても、落下時の気流を利用してローターを回転させながら着陸するオートローテーション機能を備えている。
マルチローター(ドローン)との違い
ヘリコプターとマルチローターは、同じ回転翼航空機でありながら、運用特性は大きく異なる。
特徴 | 無人ヘリコプター(シングルローター) | ドローン(マルチローター) |
得意な場所 | 平坦で広域な大規模農地(機動力がある) | 中山間地、狭小地、複雑な形状のほ場(小回りが利く) |
散布能力 | 単位面積当たりの作業時間が短い | バッテリー交換頻度が高く、広範囲では時間がかかる場合がある |
騒音 | 一般的に大きい | 比較的小さい |
安全性 | プロペラガードがない機体が一般的で、広い離着陸エリアが必要 | プロペラガード等を装備しやすく、比較的狭い場所でも運用可能 |
構造 | 複雑(メンテナンスに専門知識が必要) | シンプル(電気モーター制御が主) |
主な活用事例
ヘリコプターは、無人機の分野においても長年実用化されている。
農業
水稲を中心とした農薬散布に利用されており、連続して広範囲(例として約4ha)を散布できる能力を持つ。物流
積載量や航続距離に優れる特性から、重量物輸送など特定条件下で有利となるケースがある。
制度・ライセンスとの関係
無人航空機操縦者技能証明制度では、「回転翼航空機(マルチローター)」とは別に「回転翼航空機(ヘリコプター)」の区分が設けられている。実地試験の内容も機体特性に応じて異なり、オートローテーション機能を持つ機体では、その理解や操作知識が求められる。
関連用語:マルチローター/可変ピッチ機構/テールローター/オートローテーション/農薬散布