ドローン大辞典
GRC|用語解説|ドローン大辞典
概要
GRC(Ground Risk Class)とは、ドローンの運航において地上の第三者に危害を加えるリスクの大きさを数値で分類した指標である。SORA(特定運航リスク評価)におけるStep #2で決定される要素であり、飛行許可・承認の可否や、求められる安全対策のレベルを左右する重要な評価結果となる。
GRCの位置づけ
GRCは、ドローンが万が一制御不能となり墜落した場合に、地上の人にどの程度の危険が及ぶかを定量的に整理するための指標である。
この数値は単独で用いられるものではなく、空中リスクを示すARCと組み合わせることで、運航全体の安全要求レベルであるSAILを決定する基礎となる。
GRCの決定プロセス
GRCは、初期GRCの判定と、緩和策(リスク軽減策)による調整という2段階の手順で決定される。
初期GRC(Intrinsic GRC)の判定
最初に、機体の特性と飛行環境の組み合わせから、基準となるリスク値を1〜10の段階で判定する。数値が大きいほど、地上リスクが高いことを意味する。
判定に用いられる主な要素は以下の通りである。
機体の特性
最大寸法:おおよその機体サイズ(1m、3m、8m、8m超など)
運動エネルギー:落下時に発生する衝撃エネルギー(700J、34kJ、1084kJなど)
運航形態(シナリオ)
立入管理地域:関係者のみが立ち入る管理された空間
低人口密度環境:人の往来が少ない地域
人口密集環境:市街地など人が多い地域
集会上空:イベント会場など多数の人が密集する空間
例えば、日本で想定されるカテゴリーⅢ飛行に近い、低人口密度環境での目視外飛行では、機体のサイズやエネルギーに応じて初期GRCはおおむね4〜6程度となることが多い。
緩和策によるGRCの低減
初期GRCが決定した後、以下の3つの緩和策を適用することで、最終的なGRCを調整することができる。
M1:地上の人数を減らす対策
人がリスクにさらされる確率そのものを下げるための対策である。
内容
効果
対策のロバスト性に応じて、GRCをマイナス1からマイナス4まで低減できる場合がある(または変化なし)
M2:衝突時のエネルギーを減らす対策
万が一人に衝突した場合でも、致命的な被害を与えないようにするための対策である。
内容
パラシュートの装備
衝撃吸収構造の採用
効果
装置の信頼性や性能に応じて、GRCを0からマイナス2まで低減できる
M3:緊急時対応計画(ERP)
事故発生後の対応によって被害の拡大を防ぐための運用面の対策である。
内容
警察・消防への通報手順
関係者への連絡体制
事前訓練の実施
効果
計画の完成度に応じて、GRCをプラス1からマイナス1の範囲で調整する
対策が不十分な場合、逆にリスクが高いと評価されることもある
最終GRCの算出と意味
最終的なGRCは、以下の考え方で算出される。
最終GRC = 初期GRC + M1調整値 + M2調整値 + M3調整値
この最終GRCが、ARC(空中リスククラス)と組み合わされることで、SAILが決定され、その運航に求められる運航安全目標(OSO)の内容と厳しさが定まる。
運用上の考え方
GRCは、ドローンが落下した場合に地上の人へどれだけの危険が及ぶかを数値として可視化するための指標である。
高エネルギーの機体を人の多い場所で飛行させるほどGRCは高くなるが、パラシュートの装備や飛行時間帯の工夫などにより、リスククラスを下げることが可能である。
この考え方を適切に用いることで、運航の安全性を論理的に説明し、許可・承認に必要な安全対策を整理することができる。