ドローン大辞典
可変ピッチ機構|用語解説|ドローン大辞典
概要
可変ピッチ機構とは、回転翼航空機(ヘリコプター)に採用されている、ローター(回転翼)のブレード角度(ピッチ角)を能動的に変化させる仕組みを指す。ローターの回転数を一定に保ったまま揚力や推力を制御できる点が特徴であり、ヘリコプター特有の姿勢制御や緊急時の安全機能を成立させる中核技術である。
仕組みと役割
可変ピッチ機構を備えたヘリコプターでは、ローターのブレード角度を状況に応じて変化させることで、機体の運動を制御している。
姿勢制御では、メインローターが1回転する間にブレードのピッチ角を周期的に変化させる。これにより、揚力が発生する位置を回転円盤上で偏らせ、機体の前後方向の傾き(ピッチ)や左右方向の傾き(ロール)を制御する。この周期的な角度変化は、スワッシュプレートなどの機械機構によって実現されている。
上昇や下降は、すべてのブレードのピッチ角を同時に増減させることで行われる。ピッチ角を大きくすると揚力が増加し上昇し、小さくすると揚力が減少して下降する。
方向転換については、テールローターにも可変ピッチ機構が用いられている。テールローターのピッチ角を調整することで推力を変化させ、メインローターの反トルクを打ち消したり、機首の向き(ヨー方向)を変えたりすることが可能となる。
一般的なドローン(マルチローター)との違い
一般的なマルチローター型ドローンでは、固定ピッチのプロペラが用いられている。この場合、揚力や姿勢の制御は、各モーターの回転数を高速に変化させることで行われる。構造がシンプルで制御もしやすい一方、プロペラ角度そのものを変えることはできない。
これに対し、ヘリコプターは可変ピッチ機構を備えているため、ローターの回転数をほぼ一定に保ったまま、ブレード角度を変化させて推力を調整できる。これにより応答性の高い制御が可能となるが、その反面、機構が複雑で、整備や運用には高度な知識が求められる。
安全機能としての役割(オートローテーション)
可変ピッチ機構は、緊急時の安全確保においても重要な役割を果たす。エンジンやモーターなどの動力が停止した場合、操縦者がピッチ角を適切に下げることで、機体の降下に伴う上昇気流を利用してローターを回転させ続けることができる。
この状態を利用して着陸時の衝撃を抑える飛行方法がオートローテーションであり、可変ピッチ機構を持つヘリコプターならではの安全技術と位置づけられている。固定ピッチが主流のマルチローター型ドローンでは、この飛行方式は基本的に成立しない。
関連用語:ヘリコプター/テールローター/姿勢制御/オートローテーション/マルチローター