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ドローン大辞典

空中散布|用語解説|ドローン大辞典

概要

空中散布とは、上空から農薬、肥料、種子などを農地に散布する作業を指す。従来は無人ヘリコプターが中心であったが、近年は操作性と導入コストの面で優位なドローンの普及が進み、農業分野における省力化技術として定着しつつある。


空中散布の役割とメリット

空中散布は、農業現場における労働力不足や高齢化への対応策として位置づけられている。地上での動力噴霧機による散布と比較して、作業時間を大幅に短縮できる点が大きな特徴である。露地野菜の防除作業で作業時間が大幅に削減された事例や、10アールあたりの作業時間が従来の数時間から15〜30分程度に短縮された事例が報告されている。

散布作業を遠隔操作で行うため、重量物を背負って作業する必要がなく、身体的負担の軽減につながる。また、散布者が農薬に直接曝露される機会が減少し、健康リスクの低減にも寄与する。

ドローンは小型で機動性が高く、中山間地域や狭小なほ場、急傾斜地など、無人ヘリコプターでは対応が難しかった場所でも作業が可能である。足場が悪い場所や作物が繁茂して立ち入りにくい区域に対しても、上空から均一な散布を行える。

さらに、空撮画像などのセンシングデータと連動させることで、病害虫の発生箇所や生育不良箇所に限定して資材を散布するピンポイント散布が可能となる。この手法により、資材使用量の削減と環境負荷の低減が期待されている。


散布される主な資材

空中散布は農薬散布に限らず、さまざまな資材に利用されている。水稲、麦、大豆、露地野菜、果樹などの病害虫防除や除草を目的とした液剤・粒剤の農薬散布が代表例である。

肥料については、基肥や追肥としての散布に用いられ、生育状況に応じて散布量を変える可変施肥との組み合わせも実用化されている。種子散布では、水稲の湛水直播や緑肥作物、牧草の播種に活用されているほか、果樹では花粉を混ぜた溶液を散布し、受粉作業を省力化する取り組みも行われている。


導入コストと法規制

農業用ドローンの機体価格は、おおむね200万円から300万円程度が目安とされている。無人ヘリコプターと比較すると導入コストは低いが、機体費用に加え、講習費用、保険料、年次点検費用、予備バッテリー代などのランニングコストが必要となる。

法規制の面では、農薬や肥料の散布は航空法における危険物の輸送および物件の投下に該当するため、国土交通省への飛行許可・承認が求められる。また、機体登録や飛行計画の通報などの手続きも義務化されており、適切な運用管理が前提となる。


運用上の課題

ドローンによる空中散布では、バッテリーの持続時間が制約となる。一般的な飛行時間は10〜15分程度で、1フライトあたりの散布面積は約1ヘクタールが目安とされている。広範囲の散布を行う場合には、複数回のバッテリー交換が必要となる。

また、ドローン散布に適した高濃度・少量散布対応の登録農薬は増加しているものの、地上散布用と比べると選択肢は依然として限定的である。


空中散布の位置づけ

空中散布は、単に上空から資材を散布する手法ではなく、センシング技術やデータ解析と組み合わせたスマート農業の中核技術として位置づけられている。効率化、省力化、環境負荷低減を同時に実現する手段として、今後も活用範囲の拡大が見込まれている。


関連用語:ドローン/スマート農業/農薬散布/可変施肥/航空法/物件の投下