ドローン大辞典
近赤外|用語解説|ドローン大辞典
概要
近赤外とは、人間の目には見えない不可視光の一種であり、植物が強く反射するという特性から、ドローンや衛星を用いた植生解析・農業・森林調査において極めて重要な波長帯です。NDVIをはじめとする各種指標の算出や、広域スクリーニングなどに活用されています。
近赤外(NIR)とは
近赤外線(Near Infrared)は、可視光の赤色波長の外側に位置する電磁波の波長帯を指します。人間の視覚では捉えることができませんが、植物の葉がこの波長を非常に強く反射するという明確な物理的特性を持っています。
この特性により、近赤外は植物の量や活性度、生育状態を把握するための基礎データとして広く利用されています。
主な活用方法
植生の活性度・生育状況の把握(NDVI)
近赤外の代表的な利用法が、NDVI(正規化植生指数)の算出です。
植物は赤色光を吸収し、近赤外線を反射する性質を持つため、両者の反射率を組み合わせることで生育状況を数値化できます。
NDVI = (NIR − R) / (NIR + R)
この指標を用いることで、ドローンで撮影した圃場全体の生育ムラを可視化し、生育が良好な場所と不良な場所を判別できます。結果として、可変施肥などの精密農業に活用されます。
水稲の草丈推定
資料中の実験では、近赤外画像の画素値(DN値)と水稲の草丈との間に、R²がおよそ0.7程度の相関関係が確認されています。
可視光のRGB画像よりも、近赤外画像の方が生育差が明瞭に表れるため、作物の成長モニタリングに適しています。
森林調査・林相識別
航空レーザ測量では、近赤外域のレーザ光が一般的に使用されます。
植物の反射強度の違いを利用することで、針葉樹・広葉樹といった樹種の違いや樹冠の状態を把握し、林相識別図の作成に役立てることができます。
広域スクリーニング(衛星データ)
近赤外はドローンだけでなく、人工衛星データにも搭載されています。
衛星の近赤外バンドを用いて、圃場ごとの値のばらつきを解析し、生育ムラが大きいと推定される場所のみを抽出します。その後、対象エリアに限定してドローン調査を行うことで、調査効率を高める運用が行われています。
撮影・計測機材
マルチスペクトルカメラ
青・緑・赤に加え、レッドエッジや近赤外専用のセンサーを搭載したカメラです。
DJI P4 MultispectralやParrot Sequoiaなどが代表例として挙げられます。
改造カメラ
通常のカメラに近赤外フィルタを装着し、簡易的に近赤外画像を取得する方法もあります。ただし、精度や再現性には注意が必要です。
レーザ測量機との関係
レーザ測量では反射強度情報も取得できますが、近赤外を強く反射する素材を対空標識に使用すると、誤差の原因となる場合があります。そのため、ターゲット素材の選定には注意が求められます。