ドローン大辞典
マルチスペクトルカメラ|用語解説|ドローン大辞典
概要
マルチスペクトルカメラとは、通常のRGBカメラが記録する可視光(赤・緑・青)に加え、近赤外(NIR)やレッドエッジ(RedEdge)といった不可視光の特定波長帯を同時に撮影・記録できるカメラである。主にドローンを用いた農業分野で活用され、作物の生育状況や活性度を数値として把握・可視化するための基盤技術となっている。
マルチスペクトルカメラとは
通常のデジタルカメラは、人間の目に見える可視光の3つの波長帯(RGB)のみを記録する。一方、マルチスペクトルカメラは、これらに加えて植物の生理状態に強く関係する不可視光の波長帯を含めて撮影する点が特徴である。
一般的には、青・緑・赤・レッドエッジ・近赤外といった5つ程度のバンドを同時に取得し、波長ごとの反射特性の違いを解析に利用する。
主な役割とメリット
植生解析への利用
マルチスペクトルカメラの最大の役割は、農作物や植生の状態を定量的に評価できる点にある。
植物の葉は、近赤外線を強く反射し、赤色光を吸収する性質を持つ。この特性を利用して算出される代表的な指標がNDVI(正規化植生指数)である。NDVIは近赤外(NIR)と赤色光(R)の反射率を用いて計算され、値が大きいほど植生量が多い、または生育状態が良好であると判断される。
RGBカメラとの違い
RGB画像でも作物の色調や大まかな変化は把握できるが、肉眼では分かりにくい初期の生育不良やストレス状態は見逃されやすい。マルチスペクトルカメラで取得した近赤外画像やNDVIマップを用いることで、生育ムラや異常をより明確に可視化できる点が大きな利点となる。
具体的な活用事例
農業分野での活用
水稲などの圃場をドローンで撮影し、マルチスペクトル画像から生育ムラを把握することで、生育状況に応じて肥料の量を調整する可変施肥への応用が進められている。これにより、収量の安定化や施肥量の最適化が期待されている。
AIとの組み合わせ
マルチスペクトルカメラで取得した複数バンドの情報に、熱赤外画像や地形データ(DSM)を組み合わせ、AIによる解析を行うことで、圃場内の土壌水分分布を推定する技術も開発されている。これは、灌漑管理や干ばつ対策への応用が見込まれている。
衛星データとの連携
広域を観測できる人工衛星のマルチスペクトルデータを用いて、生育ムラが大きい可能性のある圃場を抽出し、必要な場所のみをドローンで詳細撮影する運用も行われている。これにより、効率的な農地管理が可能となる。
代表的な機材
マルチスペクトルカメラを搭載、または外付けできる機材として、以下のようなものが知られている。
DJI P4 Multispectralは、RGBカメラとマルチスペクトルカメラを一体化したドローンであり、RTK-GNSSと組み合わせることで位置精度の高い植生マップを作成できる。
また、Parrot SequoiaやRedEdge-Mは、ドローンに搭載可能な後付け型のマルチスペクトルセンサーとして利用されている。